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いちかわ大門通りジャーナル

プロが教える作文教室
小論文 基礎中の基礎

■小論文の基本
1 たくさん書くことで上達する

 数をこなすことで技術が上がるのは、作文全般に当てはまります。頭の中で「自分はこんなことが書けそう」「すばらしい発想がある」と思い巡らせても、作文はまったく上達しません。「私は書ける、書ける、書ける……」と念じるのも時間の無駄です。手を動かして書く作業が、作文の技術を向上させるのです。
 例えば、あるダンスグループが好きで、自分もダンスが上達したいと思ったとします。そのグループのダンスの動画を何百回見たところで、踊れるようにはなりません。
 作文も同様に、体(手)を動かすことで少しずつ技術が身に着くのです。
2 頭の中にない情報が書けない
 これも作文全般に当てはまります。『作文嫌いの子どもに3日で読書感想文を書かせる方法』で書きましたが、書く分量の3倍以上の情報が頭になければ、文章化はできません。800字の原稿を書くときには、2400字以上の情報を持っていなければいけないということです。
 「頭の中にある情報」には、本やインターネットなどで仕入れた外部情報と、頭の中で生まれた脳内情報があります。
3 外部情報の2倍以上の脳内情報を作る
 外部情報をつぎはぎした文章は、小論文でも読書感想文でもありません。単なる引用です。外部情報をもとに頭の中で作り出した脳内情報、つまり自分の意見を、わかりやすく表現するのが作文です。
4 他人に読んでもらう
 宿題として書く読書感想文については、既定の文字数の原稿を書くことが目標です。日本語のルールにのっとって書いていれば、担任教師も合格とするでしょう。
 一方、小論文の目的は自分の考えをわかりやすく周囲の人に伝えることにあります。小論文の良しあしは書き手の自分で決められません。周囲の人が決めるのです。読み手が「何を言いたいのかわからない文章」と判断した時点で不合格になります。
 小論文の上達が目的で他人に読んでもらうときは、年代の違う人を選びましょう。さまざまな年代の人に自分の意見を理解してもらえるようになれば、小論文の達人になったといえます。

■議論が小論文を上達させる
 議論とは、あるテーマに対して便宜的に肯定派と否定派に分かれて、自分たちのグループの正当性を論じ合うことです。一とおり議論したところで、肯定派と否定派が交代します。
 「日本は国境付近に壁を作るべきだ」というテーマを6人で議論するとしましょう。自分の思想はさておき、肯定派3人、否定派3人に分かれ、正当性を論理的に主張し合います。10分後に、先ほどまで肯定派だった人が否定派に、否定派だった人が肯定派に転じて、同じテーマで論じ合うのです。
 小論文を上達させる目的で議論を行う最大のメリットは、議論には必ず相手がいることです。「どうすれば相手に私の意見をわかってもらえるだろうか」「正しさが伝わるだろうか」と考え、悩むことが、小論文上達につながります。
 もう一つのメリットが、途中で主張がぶれないようにする習慣がつくこと。議論では、肯定派はあくまでも肯定の意見を、否定派は否定の意見を主張し続けるのがルールです。「日本は国境付近に壁を作るべきだ」の肯定派が、「壁を作るためのお金は今の日本にはないから無理かもしれない」とは言いません。「壁の費用は隣国に出してもらいます。そのために入国者には新たに高い税金をかけます」などと、最後まで肯定を貫くのです。
 私たちの普段の会話や話し合いでは、周囲との衝突を避けるために自分の意見をはっきりと言わない傾向があります。そして、途中からテーマがうやむやになりがちです。よくわからなくても「いいね」としておけば、なんとなくまとまります。
 しかし、「はっきりしない」「なんとなく」「いいね」では小論文は書けません。
 普段の会話や話し合いでは小論文は上達しないので、定期的に議論の時間を作ったほうがいいでしょう。
 議論のルールは次のとおりです。

○議論のルール
1 主張している人物ではなく論を突く
2 事実に基づいて主張する
3 具体的に主張する
4 屁理屈でもいいので、必ず理屈をつける
5 仮定に仮定を重ねない
※「近い将来に不法入国者が増えてしまったら、日本の治安が悪くなる可能性がある。もし日本の治安が悪くなったら……」というように、現在起こっていない仮の事例に対して予測を行い、その予測(仮の事例)を前提に予測をしていたら、議論にはならない
6 心の問題は道徳であり、議論では持ち出さない
7 日本の法律に違反する内容は主張しない(法律の問題点は指摘してもよい)

■何のために小論文を書かせるのか、出題者の意図
 小論文は入学試験や採用試験で取り入れられています。そもそも、どうして受験者に小論文を書かせるのでしょうか。学校の場合と企業の場合で考えてみました。
1 学校の場合は、学校の社会的地位を上げてくれる学生に入学してほしい
 少子高齢化で、学校経営は厳しくなっています。そんな中、在学生や卒業生が特別な活動で有名になることは、学校の宣伝になるので大変好ましいのです。通常のテストではパッとしない成績の学生でも、小論文でずば抜けた成績ならば見どころがあるから入学してほしいわけです。
2 企業の場合は、働く仲間として受け入れたい人、そうでなくても大きな利益を出せそうな人を採用したい
 小論文は、読み手に自分の意見を伝える文章です。書き手が自分なりに勉強しているか、懸命に考えて自分の意見を持っているか、読み手という周囲への思いやりがあるかどうかは、小論文から読み取れるわけです。努力と協調性。同じ職場で働く仲間には備わっていてほしい性質を、試験官は小論文から判断します。
 加えて、独りよがりな意見であったとしても、ズバッと核心を突き「これはおもしろい」と読み手を引き付ける小論文は、書き手の将来性を感じさせます。画期的な商品を開発して企業に利益をもたらすかもしれないと、試験官は考えるわけです。

 要は、見どころがあるかどうかを判断するために、入学試験や採用試験で小論文が取り入れられているということです。
 自分をよく見せようとして、思ってもいないことを書いたり、あまり理解していないことを書いたりすると、読み手は「信用できない人物」と判断する可能性があります。
 小論文を読むのは学校の教師や採用担当者というプロの読み手です。そのような読み手を相手に文章を書いていることを自覚しておきましょう。

■設問に対応した答えを作る
 小論文では「以下の文章を読んで、××のメリットについて答えなさい」といった設問があります。この設問に対し「私は××には反対です」と書いた時点で失敗です。メリットを聞かれたらメリットを、デメリットを聞かれたらデメリットを答えるのです。
 設問に対応した答えを作るには、普段から「勝手読み」をせず精読をする習慣を作りましょう。そのうえで、設問の最後に必ず注目し、出題者が何を求めているのかを把握します。
 「以下の文章を読んで、××のメリットについて答えなさい」に対しては、「△△といったメリットがあります。しかし▽▽といったデメリットがあるので、私は××には反対です。◇◇というやり方を提案したいと思います」と述べるようにします。
 設問に対応して、メリットを答える。そのうえで、自分の意見を述べる。反対意見の場合は、建設的な意見で締めくくる。
 字数制限がある場合はメリットを答えて終了になるかもしれませんが、制限がなければ前向きな提案をして文章を終わらせましょう。

■小論文の構成とメモ
 小論文に限らず読書感想文などすべての作文は、基本的に「はじめ」「なか」「おわり」の3部構成です。
 大切なのは、必ずメモを作ることです。「はじめ」「なか」「おわり」に何を盛り込むのかを、用紙の空きスペースや裏に書くのです。走り書きの汚い字でかまいません。
 頭の中で「こんな構成で書けそう」と思い巡らせただけでわかりやすい文章が書けるのは、天才だけです。天才でない人は、面倒でもメモを作りましょう。

○小論文の構成
1 はじめ
 これから何について語ろうとしているのか、相手にわかるように紹介します。
2 なか
 自分がどのような意見を持ち、それにはどういう理由があるのかを、相手に説明します。
3 おわり(オチ)
 自分は何ができるのか、自分は何をしたいのか、自分自身に引き付けてオチをつけます。反対意見を言いっぱなしにせず、前向きな言葉と肯定文で締めくくります。

■結局は読み手次第という面もある
 私は編集者として21年にわたってたくさんの人に取材してきました。考え方や個性は人それぞれで、取材中に「このタイプかな」などと類推したうえで作成した原稿を、取材先に渡してチェックしてもらいました。
 直接会って話をした人を相手に原稿を書くのも大変ですが、会ったこともない人を相手に原稿を書くのはさらに大変です。
 皆さんが書いた小論文についても、読み手が減点方式か加点方式によって評価が大きく異なります。「結局は読み手次第」とここで書いてしまうと身もふたもないのですが、小論文にはそのような面があることを知ってほしいと思います。ある人に小論文を酷評されたとしても、「私はもう書けない」「書きたくない」とあきらめないでください。
 小論文は、入学試験・採用試験対策になるだけでなく、自分の考えを深く掘り下げていくためにも有効な手段です。頭の中を心配や不安が駆け巡っているときに、心配・不安になっているテーマについて小論文を書くことで考えが整理されます。感情にとらわれずに済むわけです。ですから、小論文をこれからの人生に大いに役立ててほしいと思っています。