知恵の木

今月のテーマ  食  運動  東洋医学  コラム 

■漢方薬の副作用について

漢方薬はドラッグストアにもさまざまな種類が並ぶようになり、手軽に買えるようになりました。
「ナイシトール」「コッコアポ」「チクナイン」といった商品名がカタカナの医薬品も、主な成分は漢方薬です。

漢方薬の認知度が上がり、使用者も増えているはずです。
その割に誤解され続けているのです。

「漢方薬には副作用がない」
「効き目が穏やか」
「体質を改善する」

誰がこのようなことを言い始めたのでしょうか。
漢方の専門家にたびたび取材する機会があったのだが、誰一人、こうしたことを口にはしませんでした。
「体質に合えば鋭い効き目を発揮する。体質に合わなければ効かないどころか、副作用が現れることがある」と、ほとんどの専門家が話していたのです。

ときどき、漢方薬の副作用を大々的に取り上げる雑誌があります。
その新聞広告や中吊り広告を見て、「漢方薬に副作用があるなんて、だまされた気分だ」と思った人がいたら、ぜひお伝えしたいです。大嘘の責任は漢方薬そのものではなく、誤解を振りまいてきたメディアだと。

また、「漢方薬を使用して体調は改善しているのに、今回の記事で副作用が心配になった」と思った人がいたら、それは非常に喜ばしいことだと私は考えます。
理由は、漢方薬に限らず、西洋医学の合成医薬品やサプリメント、健康食品などすべてにおいて、副作用に十分注意したほうがいいからです。

「漢方薬には副作用がない」という安全神話が生まれた背景

私たちは一般的に「自然の恵みから生まれた」「長い歴史を持つ」治療法を、安全だと信じやすいもの。
ましてや、その治療法を西洋医学の医師も使っていたら、「西洋医学的な裏打ちもあるのだろう」と思い込んでしまいます。

よく考えてみると、自然は人間にとって大きな脅威ではないでしょうか。想定できない大きな被害をもたらすのは、自然災害だ。
また、野菜などを栽培している人は経験があるでしょうが、例えば同じ畑からとれたレタスでも味が大きく異なることがあります。
つまり、自然は人間に恵みとともに脅威を与え、しかもその恵みはいつも一定ではないのです。

長い歴史の中で、気候は変動するし、地形は変化します。
大気は汚染され、農薬が散布されることもあるでしょう。
環境だけでなく、人間の体も栄養状態などで変化するわけだから、治療法も古い歴史にあぐらをかいてはいけません。時代の変化に合わせながら、取捨選択をする工夫が人間を治療するうえで必要なのです。

さらなる問題は、漢方薬を理解せずに処方する医師。
著書も多く、テレビにも登場したことのある、いわゆる「カリスマ医師」の本に次のような記述がありました。

「胃の調子が悪いから、ある漢方薬を飲んだ。これがよく効いたから、胃痛予防として継続的に飲み続けた。すると体が冷えて、体調がとても悪くなってきたので驚いた。それからは、漢方薬を一切使わないようにしている」

驚いたのは、本を読んでいた私のほうです。
その医師が飲んでいた漢方薬には抗炎症作用があり、基本的に長期使用してはいけないものなのです。
漢方薬の副作用の知識もなく、メディアに登場している医師もいるのです。

極端な事例を引きあいに出したがるメディア

漢方薬の主な副作用は、以下のとおりです。

○肝機能障害
 肝臓が正常に機能しなくなり、食欲不振や体重減少、全身の倦怠感などが現れる。

○間質性肺炎
 肺でガス交換を行う「肺胞」という組織と毛細血管は、接近して絡み合っている。肺胞の壁(肺胞壁)や肺胞を取り囲んで支持している組織が「間質」。間質に炎症が起こった状態が「間質性肺炎」で、突然の発熱や乾いたセキ、呼吸困難などが起こる。間質性肺炎は、これまでに抗がん剤、市販の感冒薬などさまざまな薬剤で確認されていて、死亡例も報告されている。

○偽アルドステロン症
 「偽アルドステロン症」では、「アルデステロン」というホルモンが過剰に分泌されていないにもかかわらず、あたかも過剰に分泌されているかのように高血圧、むくみ、脱力感といった症状を示す。

○発疹
 かゆみのある湿疹や赤みなどが皮膚に現れる。

漢方薬を飲み始めて上記のような症状が現れた場合は、使用をすぐに中止して、飲んでいた薬を持参して受診してください。
また、手軽に買えるからといって、素人判断で複数の漢方薬を同時に飲んだり、合成医薬品やサプリメント、健康食品と一緒に飲んだりするのはやめたほうがいいでしょう。

薬の功罪を天秤にかけるか。
あるいは、功の部分だけをもてはやしたり、罪を糾弾したりするばかりか……
多くのメディアが後者だと思います。

雑誌も消費者に買ってもらってナンボの世界。
どぎつく、極端な方向に話を持っていきたがる傾向があるのです。

また医師や研究者なども、後者の場合があります。

医師で大学名誉教授の著書に、執拗なほど大量の、健康食品やサプリメント、漢方薬の増悪例が収載されていました。

その1冊目のあとがきに、この名誉教授が加齢性黄斑変性を予防するために、ブルーベリーの健康食品を摂取した話が掲載されています。
健康食品の添加物が原因で、名誉教授は湿疹に悩まされるようになったとのこと。
その怒りがありありと伝わってくるあとがきでした。

「なるほど、名誉教授のご立腹が、この本を書く原動力だったのね」と私は思った次第です。

名誉教授の本のポイントは、名誉教授自身が研究したり、臨床で健康食品やサプリメント、漢方薬を使ったりしていないこと。

例えば、黄芩(オウゴン)という生薬について、名誉教授の著書を読んだところ、以下の論文が引用されていました。
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010811090
「100μgベルベリンを1日1回,交配の前後に2~14日間雌マウスに筋肉内投与すると,胚盤胞への発生率が有意に低下するとともに,妊娠満期における胎子数が有意に減少した.」

このデータを生体内(in vitro)での影響としてしまうのか……と私はあっけに取られました。
食品や薬を口で食べる・一つの成分を抽出して口で食べる・成分を皮膚に塗る・成分を注射するという方法の違いによって、結果は大きく変わるからです。
よく「口で食べて大丈夫なものは肌に塗っても安心」と思われていますが、大きな誤解です。
ミカンなどがよく例に出ますが、おいしく食べられるのに、皮膚に付着するとかぶれる人はかなり多くいるのです。
以上のことから、マウスに黄芩を飲ませた研究を引用してほしいと思った次第です。

また、引用した論文が「漢方薬 (黄連解毒湯) と抗生物質 (Cefatrizine) の併用により急性間質性肺炎をきたした1例」というタイトルであるのに、本での引用部分では抗生物質だけが伏せられている箇所もありました。

そもそも漢方薬の副作用についての論文には、患者のみぞおち周辺がどんな状態だったのか、舌がどんな状態だったのか、どんな夢を見たりするのかといったことが書かれていません。
東洋医学的な診断を無視して、西洋医学的な観点だけで副作用に言及しているわけです。
そのため、「鯨を食べるなんて野蛮」と非難しているレベルの論文にも思えます。

メディアや研究者などが漢方薬をたたく背景に、ガリバー企業である某メーカーのあり方への不満・反感その他があるのかもしれません。
政治的な部分も関係するのでしょうか、私にはわかりませんが。

漢方のエキス剤を問題視する専門家が非常に多いのですが、消費者の立場では手軽に安く漢方薬を利用できるようになって非常に助かっています。
私の場合、西洋医学の合成医薬品ではのどの痛みやセキが止まりにくいのですが、漢方薬だと実によく効くからです。
発熱でひどい悪寒がするときには、葛根湯でずいぶん楽になりました。
エキス剤は漢方薬としては不完全で「正しい」ものではないのかもしれませんが、私のような人にはとても役に立っています。

自然は人間に恵みとともに脅威を与える存在で、長い歴史で環境も人間も変化する。医師も免許を持っているからといって知識や経験は同じではなく、人それぞれ。漢方薬に限らず、西洋医学の合成医薬品やサプリメント、健康食品などすべてにおいて副作用はある……
こうしたことを踏まえたうえで、自分の体にじゅうぶんに注意を払いながら漢方薬を使いたいと思っています。

 

■就寝中には下着を着けないほうがいい理由