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定本 育児の百科 松田道雄 岩波書店


「赤ちゃんには個性がある」と
気づきを与えてくれる

 828ページにも及ぶ『育児の百科』は、子どもの病気や発達、育て方のコツだけが書かれた本ではありません。人間としてまだまだ不完全な私たちが、親として成長するための励ましの言葉が語られています。
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子どもの例からすれば、あまり自信のある親は、よい親ではない。子どもといっしょに人生を探求し、いっしょに育ってくれる親がいい。
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 著者の松田道雄医師が、長年、小児科医として多くの親子と接してきた経験を記し、1967年に出版したのが『育児の百科』です。出版された頃と比べると、今はずいぶん社会環境が変わって医療技術も進み、内容の一部は古さを感じさせるでしょう。とはいえ、父親と母親がいて子どもは生まれる、妊娠・出産するのは女性である母親、母親が育児の中心となることは、今までも、そしてこれからもずっと変わりません。
 ですから、妊娠・出産で直面する迷いや困難をどうとらえるのかという点では、松田医師の言葉は現代もなお生きています。
 例えば、出生前検査について。出産の高齢化が進んでいる今、直面している母親が増えていると思います。本著の中で、松田医師は次のように語っています。
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病気があっても人にめいわくをかけず普通に生きていけるのなら「無」よりも「生」をえらびたい。
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 乳幼児の頃は、たとえ大きな病気がなくても、離乳食の進み方や皮膚の状態など細々としたことで母親は悩んでしまいます。松田医師は母親の悩みを受け止めたうえで、「赤ちゃんには個性がある」という気づきを与えてくれます。

息子の腸重積を
早期発見できた

 私個人のケースでは、腸重積に関する詳細な記述を読んでいたおかげで、息子の腸重積を早期発見でき、開腹手術を回避できました。
 下の子どもが生まれたばかりの頃、息子は2歳の反抗期真っ盛りでした。加えて、赤ちゃん返りもしていたのでしょうか、私たちの言うことを聞かず、暴れん坊でした。

 ある日曜日、昼食の最中に突然、息子が「おなかが痛い」とイスからひっくり返って、泣き出しました。おなかを手で押さえて床で転げ回りながら「痛い痛い」と言っていたのですが、数分でけろっとして食事を再開しようとします。しかし、また数分後、「痛い痛い」と床で転げ回るのです。
 その様子を見た夫は、「また息子のわがままだ」とあきれた顔をしていました。一方、私は、とても嫌な感じがしました。
「『育児の百科』に書かれていた腸重積と同じ症状だ」
 腸重積は、腸が腸の中に入り込んでしまう病気です。
 私は生まれたばかりの下の子を世話しなければならないので、夫に頼んで、日曜日でも診療している救急センターに連れて行ってもらいました。すると、1時間ぐらいたった頃でしょうか、夫が息子を連れて帰ってきました。話を聞くと、当番の小児科医は「ちょっとおなかの調子が悪いのでしょう」と整腸剤を処方したと言うのです。そもそも夫も、息子の腹痛は仮病程度に考えていたようです。
 ここで私が激怒して、生まれたばかりの子どもを置いて、私が息子を病院に連れて行く。その医者に抗議してやる、と大騒ぎしました。夫は慌てて再び救急センターに連れて行ったのですが、待合室で息子の様子がぐったりと明らかに変化し、「これはもしや」と思ったそうです。
 2度目の小児科医は別の人だったそうで、浣腸したら血便が出たので、息子は大きな病院に緊急搬送されました。症状が始まって経過したのが6時間程度だったおかげで、肛門からバリウムを入れて圧をかけて、腸重積を治療することができました。

 私がもし『育児の百科』を読んでいなければ、夫と同じように、「また暴れている……」程度にとらえていたはずです。
 もう1点、初回の小児科医のように経験が浅い人であれば、重大な病気でも見逃すこともあるでしょう。母親として、子どもの病気の知識を持っておくこと、勘を働かせることは大事だと実感した出来事でした。
 『育児の百科』を出産祝いとしてプレゼントしてくれたのは、尊敬する仕事仲間でした。この本をいただいたことを感謝していますし、私も多くの人に読んでいただきたいと思っています。
 最後に、この本の「お誕生日ばんざい」という項で書かれていることを引用します。
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人間は自分の生命を生きるのだ。いきいきと、楽しく生きるのだ。生命をくみたてる個々の特徴、たとえば小食、たとえばたんがたまりやすい、がどうあろうと、生命をいきいきと楽しく生かすことに支障がなければ、意に介することはない。

分厚い本ですが、ぜひ一冊ご家庭に置いてください。